6月の読書メーター(遅め)

7月も下旬になって6月のまとめというのもなんだかなー、とは思うものの……。
シリーズものでは『しゅらばら』『ラノベ部』『サクラダリセット』『偽りのドラグーン』をまとめて読みました。

河野裕サクラダリセット』(角川スニーカー文庫)は完成度の高さで今年のベストかも…と思える作品。細かいところを挙げれば何かあるかもしれませんが、最後まで読んでほとんど破綻が無いというか(ライトノベルに限らず)エンタメ小説一般にありがちなご都合主義的を感じさせない稀な作品でした。

平坂読ラノベ部』(MF文庫J)何年か前1巻の途中でおもしろさにピンとこず途中で放り出していたのですが、再び読んでみたらおもしろくて最後まで。会話を通じて「日常」と「変化」の両方を淡々と描きつつキャラクターの魅力を無理なく程よく引き出している作品だと思います。

三上延『偽りのドラグーン』(電撃文庫)は刊行当時、この手の「ファンタジーもの」にあまり興味が向かずマークしていなかったのだけど今回通して読むと思わぬ掘り出し物でした。
主人公の陥る苦境や向けられる悪意がシリアスで解決も爽快とはゆかないのでやや読者を選ぶと思いますが、狙った「ダークさ」とは違う作品の重みを感じました。主人公とヒロインの「共犯」関係が織り成す独特の「距離感」にはどことなく著者のブレイク作品である『ビブリア古書堂の事件手帖』にも通じるものを感じたり。


読んだ本の数:49冊
読んだページ数:16045ページ
ナイス数:52ナイス

人生 (ガガガ文庫)人生 (ガガガ文庫)
読了日:06月30日 著者:川岸 殴魚
偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)偽りのドラグーン 5 (電撃文庫 み 6-28)
読了日:06月29日 著者:三上 延
偽りのドラグーン〈4〉 (電撃文庫)偽りのドラグーン〈4〉 (電撃文庫)
読了日:06月29日 著者:三上 延
偽りのドラグーン〈3〉 (電撃文庫)偽りのドラグーン〈3〉 (電撃文庫)
読了日:06月29日 著者:三上 延
偽りのドラグーン 2 (電撃文庫 み 6-25)偽りのドラグーン 2 (電撃文庫 み 6-25)
読了日:06月28日 著者:三上 延
偽りのドラグーン (電撃文庫)偽りのドラグーン (電撃文庫)
読了日:06月28日 著者:三上 延
ゴールデンタイム外伝―二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)ゴールデンタイム外伝―二次元くんスペシャル (電撃文庫 た 20-20)
読了日:06月27日 著者:竹宮 ゆゆこ
げんしけん 二代目の参(12) (アフタヌーンKC)げんしけん 二代目の参(12) (アフタヌーンKC)
読了日:06月26日 著者:木尾 士目
奇跡なす者たち (未来の文学)奇跡なす者たち (未来の文学)
『竜を駆る種族』や〈魔王子〉シリーズなどの代表作を持つ伝説的SF作家の1950〜60年代の中短編を収録した作品集。表題作やその別バージョンともいえる「最後の城」は傑作だと思う。異星の文化をエキゾチックかつ憧憬たっぷりに描く「フィルクスの陶匠」やシュールなミステリ仕立ての「月の蛾」もお気に入り。一方「ミトル」はストーリー的にはなんのことは無い掌編だが文章が生み出すビジュアルイメージも含め強く印象に残った。
読了日:06月26日 著者:ジャック・ヴァンス
も女会の不適切な日常2 (ファミ通文庫)も女会の不適切な日常2 (ファミ通文庫)
導入部は例によって「不適切な」日常トークではじまる2作目。今回はミステリにおける〈吹雪の山荘〉ものモチーフだがその後の展開はなんでもありの感。場面場面で何が起こっているか良く理解できないところもあったが、作者によって巧妙に隠されたルールによって生み出される目が回るような展開を難なく受け入れられれば楽しめる作品でしょう。
読了日:06月26日 著者:海冬レイジ
も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)も女会の不適切な日常1 (ファミ通文庫)
ゆるめトークの日常ものと思わせて後半に衝撃の展開。一種のサイコサスペンス+〈世界改変もの〉としてのプロットはとてもユニークだと思う。キャラクターの会話が生み出すリアリティやミステリ的文脈での動機づけがまったく気にならなければ楽しく読める作品だけど僕はムリでした。
読了日:06月25日 著者:海冬レイジ
サクラダリセット7  BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)
「3」以降は初読だったが最終の本作まで一気に読んだ。後半のエピソードは浦地正宗の物語としても読めるしそういう視点で描くことも可能だったと思うが、そうせず最後まで少年少女の物語とした(最終章では「大人たち」は出てこない)のは結果として良かったと思う。やや影が薄かった坂上まで含めて個々のキャラを最終章でしっかり描ききっているのも素晴らしい。やや気が早いが今年のベスト作品のひとつだと思う。
読了日:06月24日 著者:河野 裕
サクラダリセット6  BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)
これまでゆっくりと進んできた物語が登場人物が出揃い、結末に向かって一気に動き出す。二人のヒロインについて言うと、学園祭閉会後の屋上でのシーンと「雨が上がる」直前、マンションのシーンの対照が強く印象に残る
読了日:06月24日 著者:河野 裕
サクラダリセット5  ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)
久々に本編登場となる野ノ尾さんはなんとなく山道を登った先の社から出てこない神秘的な人のような気がしていたが、そんなことはなく本作では弱さも屈託もある一人の女子高校生として描かれる。「1」の皆見未来もそうだったがキャラクターを物語世界をつくるテンプレ的な道具として終わらせずしっかり人間として描くのが本シリーズの魅力だと思う。主要な舞台となる「野良猫屋敷」を含めて場面づくりが素晴らしいと思う。
読了日:06月24日 著者:河野 裕
サクラダリセット4  GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)サクラダリセット4 GOODBYE is not EASY WORD to SAY (角川スニーカー文庫)
夏の物語である前半と後半の橋渡し的短編集。気になっていたネコのキーホルダーのエピソードも本作で語られる。独立した短編「ホワイトパズル」は往年の海外SF短編のような雰囲気を持つ佳品。季節感と登場人物の間にゆっくりと流れる時間が河野作品の魅力だとあらためて認識。
読了日:06月23日 著者:河野 裕
サクラダリセット2  WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)
2年ぶりに再読。またコネタだが、春埼がリセット能力を失った直後にケイと二人で津島と会うシーンがある。ケイが津島の津島のスーツ姿に「なんだか懐かしい」と感じるのは「3」のエピソードにつながるのだなと。こういうディティールも含めて楽しめる作品
読了日:06月23日 著者:河野 裕
サクラダリセット3  MEMORY in CHILDREN (角川スニーカー文庫)サクラダリセット3 MEMORY in CHILDREN (角川スニーカー文庫)
前作まで「野良猫のような少女」とだけ呼ばれていた相麻菫が主人公(視点人物)に加わり3人の過去が語られる。時間の流れは「2」と比べるとシンプルで「1」のようなアクション的ヤマ場も少なく平坦な印象をもつ「3」だがケイと春埼という風変わりな(作中の坂上の言葉を借りると「まともじゃない」)キャラクターにリアリティを与えるために不可欠なエピソードなのだと思う
読了日:06月22日 著者:河野 裕
ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
古書店を舞台にした連作ミステリとしても読めるが本質的には謎解きよりも「キャラクター」を描く物語なのだと思う。だから1より2の方が登場人物により親しみを感じたし、この3を読むとさらに作品世界の奥行きを感じることができる。もちろんアイデアの基本となる古書トリビアも素晴らしいがそれを上回る魅力がある。個人的には中年夫婦が再登場するエピソードに心を動かされた。
読了日:06月22日 著者:三上延
サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
ひさしぶりに再読。コネタだが夏祭りのシーンで春埼がケイから贈り物をもらい思わず鼻歌を歌いだしそうになるというシーンがある。3作目のリセット直後のあるシーンで中学2年の彼女が通りすがりの少女の鼻歌が理解できないと感じるシーンがあったことに気づく。読むたびに小さな発見がある作品だと思う
読了日:06月22日 著者:河野 裕
フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)
読了日:06月21日 著者:メアリー シェリー
変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)変態王子と笑わない猫。 (MF文庫J)
読了日:06月21日 著者:さがら 総
狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)狼と香辛料〈17〉Epilogue (電撃文庫)
長く愛したシリーズが終わってしまうのが惜しくて購入して1年近く積んでました、反省。表題作「Epilogue」作者としては前巻で書きたいことは書き尽くしたと思うが読者にとってはこうしたわかりやすい大団円があると嬉しい。「行商人と鈍色の騎士」と「狼と白い道」は人の一生について示唆しており長く続いた物語の終章という雰囲気にマッチして感慨深い。恒例の別キャラ視点で二人を眺める「狼と灰色の笑顔」も良い。
読了日:06月20日 著者:支倉 凍砂
ラノベ部 3 (MF文庫J ひ 2-18)ラノベ部 3 (MF文庫J ひ 2-18)
読了日:06月20日 著者:平坂 読
ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)ラノベ部〈2〉 (MF文庫J)
読了日:06月19日 著者:平坂 読
ラノベ部 (MF文庫J)ラノベ部 (MF文庫J)
読了日:06月19日 著者:平坂 読
泳ぎません。 2 (MF文庫J)泳ぎません。 2 (MF文庫J)
1巻とは180度(?)方向性を変え男の子視点で進む王道的ラブコメ展開。前回の水泳部3人娘が割りと空気化しているのは不人気だったのかそれとももともと織り込み済の展開だったのか…。男の子視点で描かれる描写や独特の語り口は作者の得意とするところでやはり安心して読める、この展開で進めたその先が読みたかった。本作で完結ということもありやや詰め込んだ感もあり残念。
読了日:06月19日 著者:比嘉智康
泳ぎません。 (MF文庫J)泳ぎません。 (MF文庫J)
放課後のプールサイドを舞台にちょっと風変わりな女子高生のトークで淡々と進む日常系作品。この設定だけ聞いて『ギャルゴ!!!!』や『神明解ろーどぐらす』の比嘉先生なら絶妙な会話テンポでおもしろく書いてくれそうと期待したら「あれ?」意外と退屈に感じる。エピソード後半になって、それまでもちょこちょこ見かけた、とある少年が登場するとああこういう仕掛けだったのかと。
読了日:06月18日 著者:比嘉 智康
リライト (Jコレクション)リライト (Jコレクション)
映画化もされた『時をかける少女』の設定を借りたオマージュともとれる作品だが、全般的には心理サスペンス的の印象が強く、時間SFによくあるノスタルジックなものを期待すると裏切られる。未読のヒトもいるので詳細は言わないが最後の回答編はハウダニットものとしても十分衝撃的であるし、再読すると〈倒叙もの〉的な楽しみ方もできる作品だと思う
読了日:06月17日 著者:法条 遥
野ばら 2巻 (ビームコミックス)野ばら 2巻 (ビームコミックス)
読了日:06月16日 著者:高田 築
1/2の騎士 (講談社文庫)1/2の騎士 (講談社文庫)
読了日:06月15日 著者:初野 晴
アレクシア女史、欧羅巴(ヨーロッパ)で騎士団と遭う (英国パラソル奇譚)アレクシア女史、欧羅巴(ヨーロッパ)で騎士団と遭う (英国パラソル奇譚)
シリーズ3作目。1巻で人狼・吸血鬼・人造人間、2巻では古代ミイラと往年のハリウッド怪奇映画を踏襲している感もあったが、舞台を大陸からヨーロッパに移した本作はやや毛色を変えてアルプス越えの逃亡劇。2巻ではややヴィクトリア朝風コメディーが前面に出てしまい中盤以降のテンポが悪くなっていたが、主人公周辺の登場人物が行動派の本作ではうって変わってスピーディな展開。スチームパンク的ガジェットも楽しく、前巻で結末も含め不満を感じた読者は本作まで読むことをお奨め。女性読者ならロンドン残留組男性キャラ陣のサービス満点の展開
読了日:06月14日 著者:ゲイル・キャリガー
遠まわりする雛 (角川文庫)遠まわりする雛 (角川文庫)
読了日:06月13日 著者:米澤 穂信
クドリャフカの順番 (角川文庫)クドリャフカの順番 (角川文庫)
文庫版で再読。前巻までは専ら奉太郎一人の視点で描かれた物語が古典部メンバーそれぞれの視点を導入することによって今まで見えてこなかった部分が見えてくる。世慣れて見えたえるが見せる不器用さ、古典部では無敵の摩耶花が漫画研究会で見せる脆さ。奉太郎が解き明かす事件の真相、そして摩耶花パートの終盤の展開は本作以降提示されるやや重めのテーマを暗示していて実作品としても前作発表から時間の経過、作風の変化を感じる。
読了日:06月13日 著者:米澤 穂信
わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 2 外泊ですが何か? (ファミ通文庫)わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 2 外泊ですが何か? (ファミ通文庫)
思春期女子の暴走(と書いて「空回り」)気味のアタマの中をやや詰め込んだ文章でうまく表現しているところが本シリーズ一番の特徴であると同時に読者を選ぶ部分かと思う。前巻もそうだったが当初はやや批判的に描かれるキャラが終盤に主人公が精神的に成長し理解が進むに従い好意的な印象に変わるところ点も他作品には無い魅力。主人公の憧れの存在たる「高柳君」が読者からするとやや平板なキャラなのも主人公の成長にともない変わっていくのかな。
読了日:06月11日 著者:やのゆい
いもうとがかり (MF文庫J)いもうとがかり (MF文庫J)
若干性格に難アリでいろいろ策を弄しがちな主人公と、ややイタい女の子のボタンの掛け違いから始まるボーイ・ミーツ・ガール、…という設定が前作『かぐや魔王式』とほぼ同じなのでどうしても比べてしまう。作者得意の『姫宮さんの中の人』以来のドタバタコメディ的展開は抑え、MF文庫J 伝統の青春小説風というか日常的描写が多めなのが本作の特徴か。終盤のミステリ風種明かしもちょっと今後の展開に期待させるものがある。
読了日:06月10日 著者:月見草平
はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)はたらく魔王さま! 5 (電撃文庫 わ 6-5)
いわゆる「魔王×日常」ものは登場人物の配置や設定がある程度定型になってしまう分、日常生活とファンタジー的世界観とのさじ加減が作品のおもしろさに直結する部分があると思うが、本作はそのあたり(ちょっと前の)時事ネタも絡めて絶妙である。今巻では舞台は銚子から東京に戻り3巻以降に張り巡らせた伏線がいろいろと動き出しお話が動き出す。中盤以降の東京タワーでの意外すぎる展開がおもしろい。
読了日:06月09日 著者:和ヶ原 聡司
しゅらばら! 4 (MF文庫J)しゅらばら! 4 (MF文庫J)
「クラスメイト」がお仕事のため、掻き混ぜ役の火種として「妹」を投入。物語は主人公が状況に引っ張りまわされる一方というご都合主義的展開だが非常に狭いエリアで短時間に起こったことという舞台設定でそのあたりを納得させている。1巻では単なる世間知らずキャラだった「お嬢様」が本作に至ってすっかりヤンデレ的高圧キャラへと変貌を遂げているところが今後の過酷な展開を予想させおもしろい。
読了日:06月08日 著者:岸杯也
しゅらばら! 3 (MF文庫J)しゅらばら! 3 (MF文庫J)
前半の展開だけでもこのシリーズを読む価値があると言える。「ヤルタ会談」以降の主人公とヒロイン3人の立ち位置「逆転」は2巻でやや批判めいたことを書いていた「鈍くて気づかない主人公」というハーレムものの定型になるというオチまでつく。
読了日:06月07日 著者:岸杯也
しゅらばら! 2 (MF文庫J)しゅらばら! 2 (MF文庫J)
2巻目はエロ展開に軸足が移ってしまいやや月並み、「幼なじみ」キャラも先例に漏れずややウザめになってしまったのが残念。前巻いろいろ策を弄するが詰め切れず本質的な人の良さを読者に露呈してしまった主人公もあいまって「彼女たち」との心理戦という本シリーズ最大の魅力はやや弱くなった感。しかしそれは、次の巻での前哨戦に過ぎなかった……
読了日:06月07日 著者:岸杯也
しゅらばら! (MF文庫J)しゅらばら! (MF文庫J)
一言でいうと「特殊設定ラブコメディ」ということになるか。冒頭の「ニセ彼女の三又」という設定にすんなり入りこめるとそれ以降の展開も楽しめる。中盤以降ヒロイン3人が鉢合わせる展開も、良い意味でご都合主義を勢いで読ませるパワーがある。なおいささか無理のある設定が本当に真価を発揮するのは3巻目である。
読了日:06月07日 著者:岸 杯也
銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)
読了日:06月07日 著者:ダグラス・アダムス
勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。 (富士見ファンタジア文庫)勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。 (富士見ファンタジア文庫)
いわゆる流行の魔王×日常もの。プロットは割とテンプレなので同じような作品を多く読む読者には退屈に感じるかも。本作のおもしろさはは魔法がコモデティ化したファンタジー世界と現代日本社会の符合という細部の妙にある。逆にファンタジーものとして細部にツメの甘い表現(「豆大福」とか「コンビニ弁当」とか)があるので世界観にこだわる人は興冷めするかもしれない。
読了日:06月06日 著者:左京 潤
宇宙商人 (1984年) (ハヤカワ文庫―SF)宇宙商人 (1984年) (ハヤカワ文庫―SF)
1950年代のSF黄金期を代表する作品。人物描写や会話などさすがに古臭い部分もあるがタイトルから想像されるものと違い「人口増加過密」「高度消費社会」「単純労働と画一化」「環境保護テロ」「企業による国家支配」などなど現代でも通じるテーマがもりだくさん。ストーリーはシナリオ技法的なものが確立していない時代の作品なのかややご都合主義いきあたりばったり的な部分もあるがその分予想外の展開もあり最後まで読ませる。
読了日:06月06日 著者:C.M.コーンブルース
恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)恋人たち (ハヤカワ文庫 SF 378)
もととなった中篇は1950年代の発表、当時のSFにおいて性の問題に踏み込むことはタブーだったようで相当物議をかもしたらしい。今あらためて読むとその部分は割と拍子抜けする。むしろ後半部の異星生物の奇妙な生態に関する謎解きに驚く。非常に先見的で高度なアイデアがかなり素朴な技法で書かれている感が否めず、最後は延々とある登場人物の説明に終始するところがいかにも時代を感じる。
読了日:06月05日 著者:フィリップ・ホセ・ファーマー
天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)
今回は「PART 1」=複数刊構成の序盤部ということで、物語としてのヤマ場は前半の〈スカイシー3縦断〉と〈ドロテア・ワット襲撃〉にあった印象。前者は異星/異郷探検のバリエーションとして楽しめ、後者はシリーズ中の傑作「III」のクライマックス再現としても読める。残念ながら、その分後半部分がやや散漫になってしまった印象で「PART 2」以降の展開に期待。シリーズが進むにつれ単体作品としてのまとまりが弱くなってきたのはやや不安を感じる。
読了日:06月04日 著者:小川一水
わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? (ファミ通文庫)わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か? (ファミ通文庫)
ふと手にとった昨年のえんため大賞優秀賞受賞作。女子中学生視点と最近のラノベではやや毛色が変わっており久々に新鮮な印象で読んだ。序盤は“妄想少女”という「特殊設定」が前面に出ており、その分主人公や登場人物の性格や関係性の把握しづらさを感じる。中盤の「事件」発生以降、物語の進展とともに「子供」だった主人公が精神的に成長し他者を理解していくプロセスとうまく同期する仕掛けとなっているのが見事。なお表紙の紹介文は作品の雰囲気と合っていないかなと思う。
読了日:06月04日 著者:やのゆい
天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)天冥の標 3 アウレーリア一統 (ハヤカワ文庫 JA)
読了日:06月02日 著者:小川 一水
天冥の標?: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標?: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)
これまでと異なり内容の二分の一程度を「断章」=ダダーのノルルスカインの物語に割いている。本編「“農夫”タック・ヴァンディの物語」と交互に進行するのだが時間スケールが異なるため最後まで絡まない。これまでのシリーズ既刊と比べると物語の独立性として少々難を感じなくもないが、小出しにされてきた核心部分が明らかとなりシリーズ全体が「人類の宇宙史」という枠組みを超え一気に広がり、前作までを読み返したくなるのも事実。本編部分はこれまでと趣を変え“市井の人”として生きる父と娘の物語として始まるのだが短い分と展開が早く最後
読了日:06月02日 著者:小川 一水
天冥の標?: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)天冥の標?: 機械じかけの子息たち (ハヤカワ文庫JA)
前2作「救世群」「アウレーリア一統」と比べると舞台や時間的スケールが小さい分やや説明的でこじんまりとした印象がある。物語はいわば「究極の性快楽」の探求なのだが最終的結末やメインストーリーの関係性はやや物足りなく感じた。前半の聖少女警察の強烈なビジュアルイメージや後半の探求〈シーン〉の多様性が強烈な印象を残す。
読了日:06月01日 著者:小川 一水

2012年6月の読書メーターまとめ詳細
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