林トモアキ『ばいおれんす☆まじかる!』(37/50)

ばいおれんすまじかる!―九重第二の魔法少女 (角川スニーカー文庫)

ばいおれんすまじかる!―九重第二の魔法少女 (角川スニーカー文庫)


千年に一度の魔界からの侵略。魔族は人間の負のエネルギーを集め魔神の復活を企てる。天界から遣わされた落ちこぼれ天使ミウルスと魔法少女〈エンジェルナイト・ラピティア〉の迷コンビが地上を守るために活躍する。

黒を基調としたドレスに地面を引きずりそうな白いマント。銀のティアラと、縁のないゴーグル。胸には青い宝玉。
そして手にはステッキが握られていた。おもちゃ屋さんで売っている魔法のステッキをシャープに、長くした感じだ。

(P.64)

スニーカー文庫お得意の派手な魔法バトルが繰り広げられる……と思いきやなんとステッキで殴るのです。操られた罪の無い人間もぼこぼこに殴ります、しまいには拳銃も飛び出します、躊躇無く撃ちます。ラピティアこと与謝野緋奈は暴力団の跡取り娘で繁華街を喧嘩の種を探してうろつくような暴力少女なんです。

というわけで『お・り・が・み』シリーズで人気の林トモアキのデビュー作をとりあげました。『お・り・が・み』も本作をグレードアップしたような無茶な設定でなかなかおもしろそうなのですが、今回は「ヤクザの娘が魔法少女」というシンプルだけどわけわからん設定がツボに入りこっちを選びました。本作は第五回角川学園小説大賞優秀賞を受賞し全3作となっています。

連作形式で4話構成となっているが実質的に3部形式です。個人的には第2話に笑えました。内容は物語の流れからいうととくに必然性は感じられずむしろ浮いているのですが、1話の90ページで設定や人物を詰め込みすぎた感があり、主要登場人物の性格になじんでもらう意味では緩急のつけかたが上手だなあと思いました。
話自体は本作で一度完結していています、ちょっとだけ次回作への伏線もありますが。逆にいうと二作目以降の展開はつらそうな感じもします。