久住四季『トリックスターズC PART1』

推理小説(ミステリ)を模った現代の魔術師の物語』完結編。二分冊形式の前編。

トリックスターズC〈PART1〉 (電撃文庫)

トリックスターズC〈PART1〉 (電撃文庫)

7点
前々作『D』前作『M』と続いた城翠祭も本作『C』で最終日の朝を迎える。学園祭実行委員会本部に「魔術師アレイスター・クロウリー」を名乗る挑戦状が届きほぼ同時に第一の「事件」が起こる。
今回は登場人物が多い。シリーズ第一作『トリスタ』以来の佐杏先生、周(あまね)ら元ゼミ生6名と手鞠坂のレギュラーに加え、『D』以降登場の城翠大ミス研の蓮見、衣笠、みゃー子の3名(準レギュラーの感がある)、新しい登場人物として実行委員会スタッフ代表と副代表の3名、凛々子の妹である萌々花(ももか)ら高校生3迷、オズの保全委員会から来たスピノーヴァと過去最大の規模である。
『PART1』では第一と第二の事件の発生、各登場人物たちの午前中の動向が語られる。本作もこれまでのシリーズと同様に*1周の一人称での語られるが高校生3人の須美や、ミス研のみゃー子のパートの心情描写ではさすがに苦しい部分もあるものの、これは周の例の「秘密」で説明がつくということで良しとするか。
これまで、本作のやや冗長というかのんびりとした語り口にもどかしさを感じることがあったが、今回は徐々に事件が発生し「何かが進行している」雰囲気を見事に演出することに成功している。

*1:作者はこの設定を使って過去に一度トリックを構築している