2007年上半期ライトノベルサイト杯

《新人・新作部門》
田中ロミオ人類は衰退しました

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

〔評〕「地球の長い午後」と思いきや「ソフトウェア」!ルディ・ラッカーの代表作を彷彿とさせると言うと誉め過ぎ?独特のほのぼのとした進行・演出でときたまゾっとさせられるのは親しげな「妖精さん」にとことん異質なもの感じるからかな。
【07上期ラノベ投票/単発/9784094510010】

木本雅彦『声で魅せてよベイビー』

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

〔評〕クセのあるマイナーな素材をあっさりと料理した作品。コンピュータものでは新味のある分野であるエンベデッド(組み込み)の世界や「小劇団」というこれもなかなか知られざる題材が印象に残る佳作。
【07上期ラノベ投票/単発/9784757733282】

入間人間嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸』

〔評〕この手の素材を作品設定に導入することを生理的に受け付けない人もいるだろう。刺激的な「ネタ」作品の一歩手前で踏みとどまっているのは、殺伐とした世界を描きつつもどことなくほのぼのとした温かみを感じさせる作者の視点だろうか。
【07上期ラノベ投票/単発/9784840238793】

〔新人・新作部門選評〕厳選して3作に投票します。全般にシリーズ完結済の旧作や既存シリーズを読むことが多いため、新人作品のフォローが弱いかなとちょっと後悔。

《シリーズ作品部門》

桝田省治「鬼切り夜鳥子」シリーズ

鬼切り夜鳥子3 みちのく血煙慕情 (ファミ通文庫)

鬼切り夜鳥子3 みちのく血煙慕情 (ファミ通文庫)

〔評〕単発作品の『ハルカ』に入れる人が多いかも。「夜鳥子」シリーズの魅力は、キャラクターの魅力や物語世界の斬新さも去ることながら作品ごとに結末への道筋に変化をもたせ読者を飽きさせない演出テクニックにある。
【07上期ラノベ投票/複数/9784757735934】

久住四季トリックスターズ」シリーズ

トリックスターズC〈PART2〉 (電撃文庫)

トリックスターズC〈PART2〉 (電撃文庫)

〔評〕学問としての〈魔術〉という設定を物語の中で十分展開しきれなかったかなあという惜しさ物足りなさもあるのだが、最終3作4巻で大学祭の3日間を描きみごと物語を完結させたので。
【07上期ラノベ投票/複数/9784840238502】

井上堅二バカとテストと召喚獣」シリーズ

バカとテストと召喚獣 2 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 2 (ファミ通文庫)

〔評〕続刊。どちらかというと小説に過度の「笑い」はあまり求めない方だと思う。がこの作品はツボに入った……、入ってしまった。続刊でもこの勢いと快適なテンポを維持してほしい。
【07上期ラノベ投票/複数/9784757735057】

賀東招二ドラグネット・ミラージュ」シリーズ

ドラグネット・ミラージュ2 10万ドルの恋人 (ゼータ文庫)

ドラグネット・ミラージュ2 10万ドルの恋人 (ゼータ文庫)

〔評〕映画でよく使われる「バディもの」というわかりやすいフォーマットを使ってこれだけ楽しいエンタテインメントを提供してくれるのは素晴らしい。続編も期待しているが……。
【07上期ラノベ投票/複数/9784812430118】

谷川流涼宮ハルヒ」シリーズ

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)

〔評〕今期の発表作は前編ということもあり(おそらく)評価を留保する人が多いだろうと思いつつ一票を投じる。最近「消失」以降の作品を読み直す機会があり本作が古典的なSFジュブナイルとして並外れた傑作であるとの思いを強くしたので。
【07上期ラノベ投票/複数/9784044292096】


〔シリーズ部門選評〕正直言ってシリーズ部門を5作に絞るのは大変でした。迷いに迷ったすえ今期完結した作品や続刊が期待薄な作品を優先させました。選外ですが杉井光神様のメモ帳」、山形石雄戦う司書」、野村美月文学少女」、有川浩「図書館(戦争)」の各シリーズは下期も追いかけるつもりです。