ライトノベルから引用、ライトノベルに引用?

「怖くても、一歩踏み出してみる勇気!それこそが人類を繁栄させたのよ!」会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。
――葵せきな生徒会の二心』(富士見ファンタジア文庫


アニメ化もされた〈生存〉シリーズ2巻『第一話〜冒険する生徒会〜』の冒頭のくりむ会長の台詞。
ひさびさに書棚からとったが、あらすじがほとんど記憶に残っていない、……それはそういうものか*1

何かというと、たまたま手にとったこの本の「はじめに」に引用されていて驚いたという話。

Railsレシピブック 183の技

Railsレシピブック 183の技

Ruby on Railsが比較的新しいWebアプリケーションフレームワークであることから「新しいものにチャレンジする勇気」ということらしいが、共著者のどちらかが本作を好きだっただけとも考えられる。おもしろい。



引用ではないがこんなのもあった。

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

戦略的思考の技術―ゲーム理論を実践する (中公新書)

閉店間際のデパートの地下食料品売り場では、値下げのシールをめぐって権謀術数が繰り広げられる。店は翌日に持ち越すことのできない商品を、値下げをしてでも売り切ろうとしているが、値下げのタイミングが早すぎれば売上に響くから、定価で買う気がある人がいるうちは値下げをしたくない。一方で、この時間帯には値下げされてから買おうという常連客も出撃して来ていてお目当ての商品の売り場から適度な距離を保ってあたりを徘徊しつつ、シールが貼られるのを辛抱強く待つ。(中略)、他の競争相手が自分の進路に踏み込まないように体を寄せていくこの常連さんたちの鋭い動きは、イタリア代表サッカーチームの守備を彷彿とさせる。
――梶井厚志『戦略的思考の技術』(中公新書

そう、まるでアサウラの〈ベン・トー〉シリーズ(集英社スーパーダッシュ文庫)である。

本書は「ゲーム理論」について、〈コミットメント〉、〈シグナリング〉、〈モラル・ハザード〉などの概念を作者独特のユーモラスな事例で紹介する一般書。初版は2002年で今でも版を重ねているうようだ。ゲーム理論=「囚人のジレンマ」くらいしか知らない素人でも楽しく読めた、お勧め。

経済理論の一般向け解説書がライトノベル屈指のユニークな設定をもつシリーズに影響が与えたと確信をもって主張する根拠は無いが、何かの折に作家が手に取った書籍からあのようなストーリーの着想が生まれたのではないかとあれこれ妄想するのは楽しい。




ベン・トー 1 サバの味噌煮290円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー 1 サバの味噌煮290円 (スーパーダッシュ文庫)

*1:それと、カラー口絵がとにかくエロかった