柴村仁『おーい!キソ会長』

おーい!キソ会長 (徳間文庫)

おーい!キソ会長 (徳間文庫)

出版事情にそれほど詳しいわけではないが、2009.12→2011.2というのはノベルズ初出の割に文庫化が早いなあという印象がある。
メディアワークス文庫の成功が背景にあるのだろうか、徳間文庫が昨年あたりから「大人向けライトノベル」ジャンルに参入したようだが、そのあたりも関係しているのかな、と勘ぐってしまう僕は悪い子。

作品そのものは面倒見良いというよりも巻き込まれ属性の高い主人公木曽(”会長”と呼ばれるが実際は副会長)が、美人生徒会長の言うがままに事件に巻き込まれる学園ミステリ。
主人公の立ち位置はミステリ的にはやや捻っていて、いかにも普通で善良な木曽が事件にどんどん巻き込まれ”探偵”が登場といったとこで、木曽は”助手”役か!とようやく合点がいった。

伏線などはしっかりと張り巡らされており感心したが、基本的に謎解きが本題ではないのは『神様のメモ帳』に近いがあれほど熱くは無い、同系列では『文学少女』ほどハードな展開でもないので、お薦めできる。
会長の丹野さんをはじめキャラが魅力的なので&柿田さんがちょっと不憫なので、このまま徳間文庫でシリーズ化してほしい。

著者については電撃文庫で何作も発表しているが読んだのは本作が初めて。かつてU局で放映されたアニメ版『我が家のお稲荷さま。』は全話視聴したが*1、原作についてはなぜか縁がなかった。これを機に電撃文庫の単発作品やメディアワークス文庫の近作も読んでみようかという気にさせる良作。

*1:アニメ版は原作読者にはそれほど評価が高いわけでもないようだ