(7/50)電波的な彼女

電波的な彼女 (スーパーダッシュ文庫)

電波的な彼女 (スーパーダッシュ文庫)

サスペンス風味のボーイ・ミーツ・ガールものであるが結末は苦い。
猟奇殺人が頻発する東京で男子高校生と電波系妄想少女が犯人を追うシリーズの第1作。ミステリ仕立なので物語の詳細には立ち入らないが本作はおもに主人公と少女の出会いを描いている。
主人公「柔沢ジュウ」はいわゆる「不良」でクラスでは浮いた存在。家庭では強烈な性格の母親との関係がしっくりいかず人生に自分の居場所を見出せない。ある日、進学クラスの女子生徒「堕花雨」(おちばなあめ)から呼び出され「前世からの因縁」で下僕にしてくれと言われるが頭のおかしな女と取り合わない。そのうちクラスメイト女子生徒が事件に巻き込まれ…。

登場人物の造形について。口数が少なく一見地味だが実は美人でいざとなると「ご主人様」を守るため常人離れした能力を発揮する少女というのは全くリアリティーは無いものの昨今流行のようである。
そんな「電波的な彼女」の家庭環境は一見普通で(快活な妹も主要キャラとして登場)、いったい何が彼女に異世界の生まれ変わりといったマニアックな世界に走らせたのか次作以降の展開に興味を持たせる。
個人的には主人公の母親である柔沢紅香のエキセントリックすぎる造形に(実際そういう性格と描写されているものの)今ひとつなじめなかったが、文章は地の文・会話文ともオーソドックスでわかりやすく描写も丁寧なので、血の出る描写が苦手な人以外にはお薦めできます。