(8/50)ムシウタ
- 作者: 岩井恭平,るろお
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/04/01
- メディア: 文庫
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「虫憑き」という特殊能力をもった少年少女の戦いと出会いを描く人気シリーズの第1作。
「虫」というのは簡単に言ってしまうと『ジョジョの奇妙な冒険』に出てくる「スタンド」のようなもので、それぞれが固有の能力を持ち、宿主の夢や記憶をエネルギーとし宿主の意にしたがって動く。ただ、宿主がコントロールを失うと最悪死に至ることもある危険な存在という設定。本作では政府の機関に追われる虫憑きの少女と、レジスタンスのような組織のリーダーの少女、彼女の同級生を中心に物語が進む。
正直本作をあまり楽しめなかった。前半で虫憑きの出現やその能力の分類に関する解説虫を巡る政府や組織の動きに関する説明が延々続いたのが退屈と感じた。後半では登場人物の一人の意外が正体が明らかになるのだが、そこに至るまで「偶然の出会い」的な都合の良過ぎる展開が多いため驚きの効果を減じている。戦闘シーンにおける「虫」の特殊能力の描写は視覚的にはおもしろく読めたが、登場人物たちの「悩める思春期の少年少女」的な心情描写が随所に挿入されてしまうためテンポが悪くなっていると感じた。
あとがきによると作者は本作の登場人物をどちらかと未熟で自分の行動の理由を捜し求め悩むようなかたちで描いたということである。狙いはわかりやすいが、登場人物たちの行動の動機に読者がとまどってしまうと同時に、プロットや設定における作り物感が強調される。あとがきでも窺い知れるが作者の人の良さというか生真面目さが出てしまったのかもしれない。