デュラララ!!(10/50) 急展開の快感

デュラララ!! (電撃文庫)

デュラララ!! (電撃文庫)

地方から東京にやってきた男子高校生と失った首を探す漆黒のライダースーツの妖精と池袋の街に集まるちょっとアブナイ人たちの物語。

いわば石田衣良池袋ウエストゲートパーク*1プラス「現代のおとぎばなし」という趣の作品である。
章ごとに視点が入れ替わり「群像劇」の構成をとる形式。今どきの長編エンターテイメントでよく使われ珍しくはないが、ライトノベルでは(読者と主人公との一体感を重視するせいか)意外にこの手の視点切り替えは少ないのでかえって新鮮に感じた。

この作品の登場人物は首なしライダー〈セルティー〉を除けば能力的には魔法も超能力も無い普通人なのだが、ケンカ人形の異名を持つ〈平和島静雄〉に代表される池袋の人々から、ごく普通の男子高校生〈竜ヶ峰帝人〉にいたるまでかなり強い個性を放っている。名前の出る登場人物だけで14人とライトノベルでは多いキャラクター紹介をしているうちに300ページ弱が終わってしまいそうなところを、高い構成テクニックで一つの物語としてちゃんと終わっている。
その秘密はクライマックスに至るある箇所で大胆といえるほど省いているところ*2ではないかと思う。この「急展開」ゆえにその後のサプライズが快感になるという効果もある。
ぼく自身、最後は「えっ!えっ!そうなの?」と驚くとともにかなり楽しめました。

もちろん狙ったのだろうが拷問のネタ元として電撃文庫*3を使う趣向は思わず笑ってしまった。

*1:TVドラマ化された作品だが、作中の登場人物にも同作を言及させているのが巧い

*2:帝人が自分のアパートですべての関連に気づき池袋「60階通り」での取引に至るシーケンスのこと。なんとなくハメットの『マルタの鷹』を思い出した

*3:撲殺天使ドクロちゃん』が出てくる