春期限定いちごタルト事件(25/50)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

まず絵本風だけど洗練されたカバー絵が目を惹く。電撃文庫やスニーカー文庫のようにカラー口絵や挿絵が無いのはちょっと残念だが、本文の控え目の描写から想像力が膨らむのでこれはこれでオッケーだと思う。

（ミステリーなのであらすじには触れません）
「小市民」を目指す高校生の「ぼく」こと小鳩君と「小動物然」と描写される小柄で地味な小佐内さんのちょっと変わった関係を軸に小事件を解決する連作ミステリー。「小事件」と書いたが校舎内で無くしたものを探すとかココアの作り方とかミステリーというジャンルではちょっと意外というか地味な題材を扱っておりその解決もまことに地味かつシンプル、でもそれが本作独特の心地よさを生み出している。

なんといっても最大の謎は「依存関係でも恋人関係でもない」登場人物二人の関係だろう。以前読んだ乙一『GOTH』を思い出してしまった、作品の雰囲気はぜんぜん違うのにね。

表紙絵の片山若子さんについても。星新一『きまぐれロボット』（角川文庫）とか舞城王太郎『みんな元気。』で作品をみることができます。《渋川栗》というサイトを開設されているのですが、アップされているイラストがどれも可愛くて死にます。

GOTH 夜の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)