桜坂洋『よくわかる現代魔法』(40/50)

All You Need Is Kill』(集英社SD文庫)や『スラムオンライン』(ハヤカワ文庫JA)などが話題の桜坂洋のデビュー作、第二回スーパーダッシュ文庫新人賞最終候補作だったそうです。書店店頭での入手は比較的容易と思いますが表紙がちょっとかわいすぎて通販でgetしましたよ。

ちょっとというか、かなりトロい女の子〈森下こよみ〉が主人公。ダメな自分をなんとかしたいという思いを行動に移し「現代魔法」の世界に跳びこむのですが、なかなか思ったように魔法は使えません。通常この手のドジっ子キャラクターは受けを狙い過ぎてかえってイタくなったり読者の反感を買うのですが、こよみの場合自分のダメさ自信のなさに悩みつつ一生懸命がんばっていて思わず応援したくなるっておじさんですかそうですか。

あたし、ほんとにバカで……ステッキをふるって呪文を唱えればなんでもできるんだって、なんにもわかってなくて。

(P.286)

本作の「現代魔法」では呪文や魔法の道具ではなくコンピュータを媒体にプログラムをロードすることで魔法を発動します。魔法のビジュアル的な派手さや設定のディテールさは類似テーマの作品に対し決して勝ってわけではないですが、専門的(?)なコンピュータ用語が魔法用語として使われるユニークさは楽しめます。
お話も「隠された才能が一気に開花!」といったご都合主義的な展開でははなく、あくまで未熟な主人公が失敗を繰り返しつつも、自分自身と向き合い少ない機会を活かして目的を達するカタルシスがあります。登場人物たちの主人公に対する厳しくも暖かな視点も好感度高し。

Wikipedia 桜坂洋