桝田省治『鬼切り夜鳥子(ぬえこ)2 京都ミステリーツアー』

鬼切り夜鳥子2 京都ミステリーツアー (ファミ通文庫)

鬼切り夜鳥子2 京都ミステリーツアー (ファミ通文庫)

7点
個性的なゲーム企画やシナリオで知られる桝田省治の小説二作目は400ページ超というファミ通文庫にしては大部*1となっている。おそらく、SNSで少数のメンバーに執筆中の作品を随時公開し意見をとりいれてゆくという「製作委員会形式」をとったことの影響と推察されるが、意外に中ダレもそれほど無く一気に楽しく読める内容だった。
続編のあり方としては緻密な計算に基づいていると感じた。1作目の奇手ともいえる作劇には大いにインパクトを受けたが、続編でそのパターンを踏襲せず、プロット的にはむしろ正統的ともいえるハリウッド産B級アクション的な正攻法をとっている。
さらに登場人物の性格造形を前作より深めることで続刊に期待をもたせるという正統ライトノベル的な手法(?)も見てとれる。
前作の単なる続きというよりは豪華アップグレード版に近い本作だが本質的な部分で前作と共通する部分もある。前作は「学校+5日間」であり、本作は「京都市内+修学旅行」という空間と時間の制約である。はっきりとは言及されないが修学旅行期間という縛りが存在することでダレることなく作品を楽しめるのだと思う。

*1:高殿円『カーリー』が同程度だったかなぁ