久住四季『トリックスターズC PART2』

トリックスターズC〈PART2〉 (電撃文庫)

トリックスターズC〈PART2〉 (電撃文庫)

8点、推理小説としての完成度はシリーズ中最高と思う。

「なるほど。お前もすっかり主人公が板に付いてきたな」
「なんですかそれ」

これまでどこか傍観者的な語り手だった周(あまね)は、冒頭のある経緯から事件に関わらざるを得なくなり「登場人物紹介」にある「騙り手」を演じることになる。紛失事件に端を発する学園祭妨害事件は「解決」し、もう一つの結末が明らかになる。ここで読者はシリーズ全体が周の「旅立ち」へ向けたひとつの物語と認識する。すばらしい終わり方です。
純粋に事件推理ものとしても、周の二度の「解決編」プラス本当の結末はかなり凝っており楽しめた。上巻『PART1』ではこんなに展開してどうなるのかと思った人間関係の伏線も『PART2』で放り出されること無く回収される。偵史郎と凛々子、みゃー子の関係や、実行委員代表の国塚と蓮見、副代表瀬尾の関係、萌々花と凛々子の姉妹のギクシャクした関係、須美と園馬と謎の「彼女」の関係、そして……、と凄いね。
シリーズ全体を振り返ると広義の「密室」という共通点があるものの、各作が似たようなパターンに陥ること無く特徴ある作品となっておりこのタイミングでの完結があらかじめ計画されていたと思わせる。5作6巻はシリーズものライトノベルとしては短い方かもしれないが、続編を期待するよりもむしろまったく新しい次回作を期待すべきなのかも。