岩原裕二『Dimension W』(ディメンション ダブリュー)
- 作者: 岩原裕二
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2012/04/25
- メディア: コミック
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アニメ『DARKER THAN BLACK』のキャラクター原案、コミカライズなどで知られる岩原裕二の新作コミック。我ながら1巻の段階で買うというのは珍しいと思う。*1
さて、一度読んだが「ん、ん?」となってしまう、超小型で無限の動力源となる“コイル”というガジェットが登場する世界にしてはそのインパクトが薄すぎるように感じる。とくに世界の経済や安全保障に対する影響はどうなっているのかと気になりつつ読み進めるのは、多少エキゾチックな点はあるにせよ作中で描かれる2072年は既存の近未来SF映画やコミックでもよく見る世界である。
実際のところ、念頭にあったのは昨年の翻訳SFで話題を独占したパオロ・バチガルピ『ねじまき少女』(早川書房)である。同作ではエネルギーが枯渇しカロリーが「希少」になりすぎて我々が暮らす現在のそれとは一変してしまった世界の姿を描いているが、ポータブルなエネルギー源とかのアイデアはよく似ている。
さらにストーリーは例によって映画「レオン」的なアレである*2。少女(メカだけど)と何やらプロフェッショナルな中年男である、「あんたそれはもう他でやったろ」と言いたくなるが、二度目に読んで印象が少し変わる。
一般にSFがアイデアや世界観の奇抜さで勝負と言っても、コミックは「絵」がものをいう世界であり、「世界の有り様」をいくら語りつくしても読者が入ってこれなければ意味はない、何よりまだ第1巻である。わかりやすい「妹」属性や怪盗といったケレン味で読者を引き込む業をしばらく楽しむとしよう。なお陰影の強い動きのある絵はかなり好み。