有沢まみず『いぬかみっ!』(42/50)

いぬかみっ! (電撃文庫)

いぬかみっ! (電撃文庫)

犬神使いの一族の少年が主従の契りを結んだのは容姿抜群だが問題児の美少女"ようこ"だった。
本作は『インフィニティ・ゼロ』で第8回電撃ゲーム小説大賞の銀賞を受賞した有沢まみずの人気シリーズ。現在11巻まで発表されています。未見ですがテレビ東京系列でアニメ化されているそうです。

今日の彼女は厚めのウール地のスカートと白のブラウス、カーデガンという落ち着いた服装だった。それに髪を黄色いリボンで束ねて、尻尾も綺麗に隠している。ぱっと見、良家のお嬢さんだった。

(P.148)
「カーデガン」は別の箇所では「カーディガン」と書いているので多分誤植でしょう……というどうでも良いツッこみはともかく、丁寧な服装描写が随所にあるのが新鮮な印象です。段ボール箱に五着の服を丁寧に畳んでしまっている描写とか、ちょっとしたリアリティがあるのもおもしろいです。

主人公の少年は高校生なのですが、学園生活の描写は大胆に省略しています。冒頭彼の大雑把で単純そうな性格になかなか感情移入しにくいのですが、後の章で、四度目の留置所入りをするに至り思わず不憫になってしまいました、がんばれ!
というか男がよく脱がされる(脱ぐ)作品です、かわいいヒロインの描写だけではちょっとエロ成分が出過ぎなのでこういう笑い要素でバランスをとっているのだとしたら凄いです。

基本的には短編連作形式で手軽に読めます。短編だとマンネリ化やネタ切れが心配ですが続刊のあらすじをざっと見た限り、テンションが下がる気配が無いのも凄いですね。プロットだけ見るとよくあるパターンの作品に見えますが、機会があれば続刊を呼んでみたいと思わせる意外な良作でした。