野村美月『あだたら卓球場決闘ラブソング』

野村美月「卓球場」シリーズ第３作。今回はシリーズの語り手朝香が恋をします。

あだたら卓球場決闘ラブソング (ファミ通文庫)

赤城山の卓球の神様の巫女である「華代ちゃん」をはじめ個性的な女子大生が活躍する本シリーズ。語り手である朝香はこれまで個性の強い９名の中ではどちらかというと普通の優等生キャラだったのですが、今回は彼女が恋をするということでお話がもりあがります。女友達同士の恋バナはやはり盛り上がります！
好きになったバイト先の大学生山田が「魔王の後継者」でというトンデモ設定なのですが地味顔でヨーカドーのカジュアルブランドを愛好し、夢が「世界征服」というギャップに笑えます。「しずかな湖畔」「まっかな秋」や定番の「ドナドナ」などのスタンダードソングもお話を盛り上げます。
作者自身の体験に根ざした学生時代のノスタルジックな観点や感動という点では、１作目に及ばないと思いますが、朝香と山田の卓球場での決闘の掛け合いの面白さ、脇役影良（かげよし）のユニークさなどでは傑作と言っても良いでしょう。