紅玉いづき『ミミズクと夜の王』

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

2006年度の電撃小説大賞の《大賞》受賞作品。
従来のいわゆるラノベ的主流にある作品ではなく、(最近のトレンドである)一般文芸との境界作品とも毛色の異なる野心的作品。ジャンルの再生産にとどまらず敢えて異色作による話題づくりをもってくるところにメディアワークスの底力を感じさせる。

世界設定やプロットは童話的な世界観を採用している。まるで児童文学のような作品の中に現代に生きるわれわれにも通じる闇が描かれ時折ハッとさせられるのは確か。
純化すると『児童虐待』であり、トラウマにより喪われた心を取り戻す物語と言えるのだが、童話の例にもれず結末はやや類型的でありテーマの扱い方には賛否があるだろう。

あくまでキャラクター造形を作品の根幹に据えるライトノベルという形式をとるならば、それは結局のところ主人公や個々の登場人物の喪失からの回復の物語にしかなり得ず、その過程があまりに童話的に単純化されると読者の得るカタルシスは減じてしまうのではないかと思う。6点