木本雅彦『声で魅せてよベイビー』

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

声で魅せてよベイビー (ファミ通文庫)

第8回えんため大賞佳作受賞作。この時期は受賞作が各レーベルで一斉に出ることを今更知った僕はラノベ1年生です。

本作はハッカー少年とオタク少女のちょっと変わったボーイ・ミーツ・ガールものであるが、いわゆる文化系コンピュータオタクとはちょっと違う理系コンピュータ少年をそれなりのリアリティをもって描いている点と、演劇というちょっと毛色の変わったモチーフを入れて作品にメリハリを加えていて楽しく読めた。

実は何度か手にとろうとしたが、「どうせ文化圏の異なる二人のギャップをコメディータッチで描いたドタバタなんだろうな。」*1と先送りにしていた。実際読むと「うあー、こうくるか!?」と驚きの連続(笑)
無線LANから侵入するところなどはちょっとテクノサスペンス調な感じでハラハラする。あとがきによると著者は現役の「UNIX屋でネットワーク屋」とのことで、ヒロインとの関係をいちいち理路整然と考えてしまう理系少年の心の動きとかは滑稽さと同時にリアルさを感じた。8点+

*1:そういうのを描いても良質なコメディになるのはひと昔前のハリウッド製ロマコメ映画を見ても明らかだが、良い意味で裏切られました。