谷原秋桜子『天使が開けた密室』

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

行方不明の父親を探しにいくためアルバイトをしている女子高校生がアルバイト先で事件に巻き込まれるライトな本格ミステリの第一作。富士見ミステリーから2001年2月に刊行された作品の5年ぶりのリニューアル版。
*1

ミステリなので内容には触れない。
表題作よりもむしろコンパクトに謎ときをしている短編作品の方が気に入った。葬儀社のアルバイトという話題性や「衆人監視の密室」というテーマでは表題作が優れているものの事件が起こるまでが長過ぎると感じてしまう。300ページ弱の作品で事件が起こるのが200ページあたり。キャラクター紹介がやや長すぎるかも。
ヒロインをはじめとする登場人物は、ぼくが普段読むようなラノベとはちょっと異なる感じで新鮮。おそらく少女小説レーベルっぽい性格づけなのかな。
隣に住む大学生修矢は美男子だがヒロインには無愛想、頭が切れいざというときに頼りになると少女小説的(少女漫画的?)な理想の男子のイメージ。

やや茶色を帯びた天然パーマの長い髪、切れ長の目と黒々とした瞳、古代ギリシアの彫刻に出てきそうな顔立ちのため、正面から見つめられるとドキッとしてしまう。その上、百八十センチを超える長身だ。服装は、裾があちこちほどけたグレーのマスルシャツに、自分でジーンズを切って作った短パン。いつもこんなラフなスタイルで通している。

ヒロインの目を通しての彼の描写も少女の隠れた欲望を暗示させ微妙なエロを感じる。このあたり富士見ミス版発刊時にはどういう反響だったのか気になる。6点

*1:機会があったので現在新刊が入手困難な富士見版も新古書店でチェックしたところ、ヒロイン美波は現在のミギー版表紙イラストと雰囲気は異なるもののよく似ている。