桜坂洋『よくわかる現代魔法 ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ』

6点
前2作までの時間から6年前にさかのぼったクリスマスを舞台に『クリスマスショッパー』事件と弓子と古典魔法との出会いを描く。
こよみが姉原美鎖の現代魔法で過去にタイムトラベルするのだが、この仕組みがおもしろい。既に決定的な過去を魔法で再現するだけであればパラドックスは生じないのだろうなあ、と思っていたら、あれれれ。最後は登場人物の記憶が改変されていたり。
どんくささがちょっと苦手のこよみも本作では小学生の弓子(性格は高校生時代と同じ)に対し「お姉さん」として振舞おうとがんばっておりこのあたりは微笑ましいと感じる。
本作のシリーズ内の位置づけであるが、一作目でメインの登場人物はほぼ出揃っており、そのせいか多少こよみと弓子の関係というのを過去の「再話」という形でフォローする必要があったのではないかと思う。

蛇足
副題の「ゴーストスクリプト」は作中では「モノに宿る人の記憶が実体を持つ」現象と説明されるが、現実のコンピュータ用語ではプリンタ制御等の印刷技術で用いられるpostscriptのフリー実装であるghostscriptを指す。postscriptの原意は「あとがき」のことであり、本作のあとがきにしっかり「postscript」とあると思わずニヤリとしてしまう。