高遠豹介『藤堂家はカミガカリ』

第14回電撃小説大賞・銀賞受賞作品
プロットや設定はよくあるパターンに忠実な王道路線ですが、魅力ある登場人物の会話のリズムで最後まで飽きさせない良作でした。

藤堂家はカミガカリ (電撃文庫)

藤堂家はカミガカリ (電撃文庫)

両親を事故で失い車椅子の姉と二人暮しの気弱な少年の前に二人のやたらノリのよい男女二人組が現れる。なにやらいわくありげな二人は少年の家に半ば強引に居候をはじめるが、目的は少年が原因と思われる不思議な現象に関係しているようで……

……というストーリーならよくあるのですが、この作品の最大の魅力は、異世界「ハテシナ」からやってきた〈ハテビト〉のエージェント「神一郎と美琴」視点で二人の会話のノリの良さを作品の中心に据えていることでしょう。従来よくある視点を変えるだけでこれだけ楽しめる作品になるとは正直意外でした。
クライマックスでちょっとしたミステリ仕立ての種明かしもありますが、物語はほぼ王道路線で安心して楽しめますし、最後まで読むとしっかりと少年の成長物語としても成立しているところでしょうか。素直に次回作に期待できます。

ところで普段は本を保護するため厚手のカバーをかけているのですが、読み終わってからカバーを外してあらためて赤ランドセルにグングニル(槍)の少女イラストとそこに書かれた文を見て笑いました、イラスト担当の油谷秀和さんGJ