支倉凍砂『狼と香辛料II』

このライトノベルがすごい!』2007年版で1位となった『狼と香辛料』シリーズの第2作です。続刊においても独特のおもしろさは衰えず、オリジナリティーもつ強さをあらためて感じました。

狼と香辛料 (2) (電撃文庫)

狼と香辛料 (2) (電撃文庫)

本作の魅力は、商取引やお金といった〈経済〉をテーマに他の作品ではみられないユニークな物語をつくっていること、それにも増して主人公である行商人ロレンスとヒロイン賢狼ホロの会話が持つ楽しさにあると思います。ロレンスは一人前の商人であるという自負があり、ホロとの駆け引きにあれこれと頭をめぐらしますが、最後はいつも一枚上手のホロからかわれて終わるところも微笑ましいです。
前作は主人公とヒロインとの出会いをメインに銀の通貨取引にかかわる陰謀をプロットとして絡めたものでしたが、今回は主人公がある取引上の失敗から破産の危機に陥りそこから大逆転というオーソドックスな展開ですが物語がシンプルな分、読後の満足度は高かったです。

文倉十(あやくら・じゅう)さんのイラストについて。当初はやや表情が硬めのキャラクター絵と地味めの構図にどうかな、と思ったのですが、衣装や小物類などがリアリズム志向で変に奇をてらわないところが好感がもて、何よりもホロの素敵な流し目に『狼と香辛料』を描くのはこの人しかいないのではと思いなおしてます。