福田政雄『殿がくる!ニッポン最後の日!?』

戦国の覇王織田信長現代日本にタイムスリップするというドタバタものになりがちな設定にも関わらず、極東アジアの安全保障や国債による国家財政破綻という政治テーマをストーリーの骨子に据えた異色のライトノベルの最終巻です。

殿がくる!ニッポン最後の日!? (集英社スーパーダッシュ文庫)

殿がくる!ニッポン最後の日!? (集英社スーパーダッシュ文庫)

3巻目ともなると『殿』というキャラクターの有無を言わせない勢いも些か衰えてきたのか、冒頭の新一郎をわが子のように見守る視点もなんとなくスケールダウンを感じてしまうわけです。そこで最終巻はひねらず原点回帰してみましたという展開になっているのは正解かもしれません。極東アジアの軍事情勢の緊張にともない米国が再び乱暴な手法で日本を手にいれようとしますがまたしても殿の機転で危機を脱出しますが、力わざではなく戦国時代さながらの外交駆け引きというところが面白いです。ライトノベルよりも普通に一般文芸で出した方がうけるのではないかなと思いました。5点