尾関修一『麗しのシャーロットに捧ぐ ヴァーテックテイルズ』

昨年の富士見ヤングミステリー大賞・佳作。
ある洋館を巡る三つの物語で構成されるホラータッチのミステリー。作中に挿入されるエピソードが読者の目をあざむくトリックになっている。
基本的にはゴシック・ホラー的というか古典的な「お化け屋敷」もの。作者もそうした趣向を意識的に用いていることを表明している。そういう意図が若い読者に新鮮なものとして伝わるかは微妙。「19世紀の欧米的を彷彿とさせるが完全に架空の世界」を舞台にしている作者の意図は本作のみを対象にするならそれほど成功していないと思う。本作で唯一気になった点。

作品の構造やトリックの趣向も含め、野村美月文学少女』シリーズのある作品との類似が見られるが、かの人気作品には本を食べるかわいい妖怪は出てきても美青年の「悪魔」は登場しないので作品の雰囲気は随分と異なる。
いわゆる「キャラクター小説」としては平板な印象でやや損をしているところがあるが、プロットがなかなか練られていて、第二部後半以降は作者のトリックに惑わされつつ楽しんで読めた。6点+